医療映像コラム

注目コラム

幻肢痛の痛みにVRが効果的?VRを使って脳にアプローチ!

幻肢痛の痛みにVRが効果的?VRを使って脳にアプローチ!

東京大学医学部付属病院准教授らの研究グループの発表によって、VRを使って幻肢痛の痛みを軽減出来るということが判明したというニュースがありました。

これまでの治療方法ではなかなか痛みを軽減させることが難しかったという幻肢痛。

その痛みのひどさによって、心を病んでしまう人すらいるといいます。

そんな辛い幻肢痛の痛みの軽減になぜVRが効果的なのか、VRを使ってどんな風にアプローチをしたのか、どんな風に効果がでたのか、ここではそんなことを紹介していきたいと思います。

手足をVRで左右反転させて幻肢痛を軽減

VRを用いて幻肢痛を軽減させるというと、非現実的な映像を見せて、そこに没頭させて幻肢痛の痛みを忘れさせるという方法を考える方もいるかもしれません。もしかしたらそれでもある程度の効果をあげることは出来るかもしれませんが、この研究で行われたのは、そういうアプローチではありません。

そうではなく、ある方の手足のモーションキャプチャーを取り、それをVR内で左右反転させることによって、実際にはない手足を、VR内ではあるように感じさせたのです。

実際にはない手足があるように感じられれば、もともとその手足があったときの間隔を思い出すことが出来るようになるといいます。

そんなふうにして自分の意思で手足を自由に動かしているようなその感覚を脳に伝えていくことによって、神経が再構築されて、幻肢痛の痛みが軽減していく。

・・・というのがこの研究の発表です。

似たような方法として、鏡を活用した方法もあります。

鏡に映っているものは左右反転しますから、鏡に映った自分の手足を見ることによって、無いほうの手足をあるように思わせるという手法。

これもまた、やっていることはVRでのそれとあまり差はありません。

鏡を用いたその方法でも一定の効果が見られていますから、より精度が高く、よりのめりこんでの治療になるVRを用いての治療に効果がみられるのも、当然といえば当然なのかもしれません。

VR内で手足を使うタスクに取り組ませる

手足をVRで左右反転させて幻肢痛の軽減を試みるとはいうのは、ただVR内で手足を左右反転させて、その中で自由に手足を動かさせるというだけでは難しいでしょう。

なので当然ただ左右反転してそれだけで終わりというわけではなく、治療のために、VR内で様々なタスクを課していったといいます。

たとえば、「両手を使って何かを持ち上げる」とかそういった簡単なタスクから始めて、それが問題なく出来るようになったら、もうちょっと複雑なタスクを提供します。

そんな風に少しずつタスクのレベルを上げることによって、やっている方もゲーム感覚で楽しみながら取り組むことが出来るようになりますし、少しずつ着実に感覚を取り戻していけるようになるのです。

楽しみながら取り組むことが出来るというのは、幻肢痛を抱える人にとってはすごく大きいことでしょう。

痛みというのは、人間にとっての影響力が非常に大きいものですよね。

たとえばお腹に痛みがある状態で何か美味しいものを食べようとしても、それのおいしさを感じることは難しくなります。足に痛みを感じている状態で早く走ろうとしても、それは難しいでしょう。

同様に、普段楽しめていた何気ないことが、幻肢痛が起こっているせいで楽しめなくなっている人も多いはずです。

そんな時、ゲーム感覚で楽しみながらできる治療法があるとうのはすごくうれしいもの。さらにそれをすることによって、痛みがなくなるわけですから、次からはもっとそれをするのが楽しみになります。

そんなふうにして少しずつ、痛みに対しての治療だけではなく、メンタル面の治療もしていけるというのは、VRによる幻肢痛治療の一つのメリットでしょう。

VRを用いての幻肢痛治療は効果が早い

VRを用いて幻肢痛を治療するというこの方法には、効果を感じられるまでが早いという一つの特徴があります。

鏡を用いた療法の場合には、毎日15分程度の治療を行い、効果が発揮されるまでに2週間から、長ければ半年くらいの期間が必要だったといいます。治療をしてすぐに効果がでないと、あまり効かないとはわかっていながらも、ひどい痛みを何とかしようと思って、無駄に薬に頼ってしまうこともあるでしょう。

しかしこのVR療法の場合には、施術を開始してからだいたい5分後くらいには効果が表れ始めて、しかもその効果は2週間程度は持続するというのです。

5分くらいですぐに効果がでれば速やかに痛みから解放されていくので、患者さん側にとっては間違いなく良いポイントですし、治療を提供する側にしてみても、5分程度の施術で効果を発揮させることが出来たら、より効率の良い働き方が出来るようになるでしょう。

このようにVRを幻肢痛の治療に用いるというのは、治療を提供する側にも提供される側にもメリットがあることなのです。

だからこれからますます色々なところで幻肢痛にVR治療が用いられるようになっていく可能性は、すごく高いのではないでしょうか。

VRでの幻肢痛治療は薬の量を減らすことにもつながる

VRを幻肢痛の治療に用いることのメリットは、何も効果が早いという事だけではありません。効果が早いということも間違いなく大きなメリットではありますが、それ以外にもう一つ、すごく大きなメリットだといえるポイントがあるんです。

それが、薬の量を減らすことにつながる可能性があるということ。

VRによる幻肢痛の治療であれば、薬を使う必要がありません。

即効性も高い上に持続性もあるわけですから、あえて薬を使う必要性もないのです。人によっては薬と併用しつつVRでの治療を進めるという方もいるかもしれませんが、基本的には別に薬を必要としているわけではありません。

薬は確かに効果的なこともあるでしょう。でも、強い薬になればなるほど、何らかの身体への負担も生じてくるものです。

しかも幻肢痛の痛みは、薬だけではその根本を絶つことは難しいですよね。だから、薬だけでなんとかしようとしたら、多くの場合で長くその薬を使い続けないとならなかったはず。

長くその薬を使い続けるという事は、イコールで身体への負担が大きくなるということになります。それでは幻肢痛の痛み以外に何らかの不調を発することも出てくるかもしれません。

でもVRを用いての幻肢痛治療の場合は、そうした副作用的な心配は、かなり少なくなります。それもまた、患者さん側にとっては大きなメリットになるのです。

VRによる脳へのアプローチは他にも

このようにVRを用いた治療方法は、何も幻肢痛だけのものではありません。たとえばVRを用いて脳卒中から来る痛みを軽減するという治療術もあるのです。

幻肢痛の痛みも、脳卒中から来る痛みも、どちらも脳からの痛みになります。

VRを使えば、脳に刺激を与えることも比較的に簡単に出来るわけですから、そうした別の理由の脳由来の痛みに対してアプローチしていくことも出来るのです。

だから今後は幻肢痛や脳卒中から来る痛みだけではなく、他の脳由来の痛みに対しての治療法もどんどん増えていくでしょう。

患者さん側にとってはVRでの幻肢痛治療は理想

楽しみながら、しかも素早く痛みから解放されていくというのは、治療を受ける側からしてみればまさに理想の治療方法になります。

治療を進めるのが楽しくなり、病院がもっと良い気持ちで行ける場所になることは間違いありません。

そんな時代、そんな場所を創っていくためにも、幻肢痛治療のためのVRシステムの導入を考えてみるのは、面白いでしょう。

一覧に戻る